M,sホール
昭和初期の倉庫の再生
永く使用されないまま物置になって放置されていた昭和初期のタマネギ小屋が、ピアノ・バイオリン・バレーのレッスンの場、アトリエ・読書・集会の場など、家族の様々な趣味の場として生き返りました。
家族全員がそれぞれの趣味を生かせる場所にしてほしい。
中学、高校の同級生で、ずっと交流が続いている。
この小屋を支えている、うねるような地松の梁の存在感は、この建物を存続させるための大きな鍵となりました。
辻子(つし)二階を撤去し、その芸術的とまで思える地松の梁を現しにし、構造的な補強をしていくと共に、 道路側の窓は塞ぎ、庭に面した壁には大きな開口を開け、デッキを介して、外の庭の緑につながる、居心地の良い空間へと再生しました。
ホールとバックスペースである、化粧室、湯沸室を隔てる壁は、屏風のようにして建てることで、空間を区切ることなく、ステージのバック反響版としての役割も果たせます。
独立壁の素材は、その梁のもつ力感と対比して、釣り合うものである必要があり、タオル工場のレンガ造をどこか連想させるような、極端に色むらの多い素焼きのセッキ質タイルを、底を荒らした深目地にして貼り上げ、砂入り漆喰木鏝ずりの余白の壁、蜜ロウ仕上げの秋田杉の床と相まって、どこか懐かしい雰囲気のする空間となりました。
また、書棚は米松の梁と秋田杉の厚床板を組み合わせたものです。
2人の娘のバレー、ピアノ、バイオリン、の練習、油絵のアトリエ、とそれぞれの用途に合わせて、利用しています。
また、長らくダンボール箱に入って眠っていた書籍を並べることが出来、祖父は喜んでいます。
庭に開放した窓越しに、木々の緑を楽しみながらの、団欒は、より一層、くつろぎの時間を持つことが出来るようになりました。
暖炉に薪をくべて、火を眺めながら、宵の時間も楽しんでいます。
うねるような地松の梁は芸術的な存在感を醸し出し、この場所に力強さを与えています。
庭に面した壁には大きな開口をあけました。